バニラアイスのすごみ
ほんとうにすごいひとって、限りなくふつうのひとっぽく見える気がする。
なんというか、ものすごい功績とかあるはずなんだけど、そんなのを感じさせないひとが、やっぱりいちばんすごいと思うのだよ。
服部みれいさんというひとが言ってるのだ。
「栗原はるみさんが好きです。奇をてらっていない感じ。ふつうさ、が好き。
なんでもない笑顔。なんでもない日常。なんでもないレシピ。でも、バニラアイスクリームがやっぱりおいしいように、モーツアルトにすごみがあるように、一見、中道のように見えるものって、やっぱりすごみがあると思う。」
(服部みれい『あたらしい食のABC』「栗原はるみさんのこと」より)
これよ、これ。
たしかに、ジャモカアーモンドファッジ&ラブポーションサーティワンってのも、きっとおいしいんだろう。きゃーきゃーいいながら食べるんなら、とてもおいしいんだろう。
でもさ、牧場でつくった牛乳アイス、とかは、とてもとても地味だけど、わ…っていう声にならない衝撃が走るのよね。
派手なものは、派手なもののよさがある。
でも、きっと、ほんとうに良いものって、とても地味で、とてもふつうなんだけど、じわじわと声にならないような感動を与えてくれるのだよ。
おいしいバニラのアイスがきっといちばんおいしいの。
っていうようなことを、桂文枝さん(新婚さんいらっしゃーいの三枝さんですね)の講演を聞いて思った。
正確にいえば、三枝さん(とかいたほうがしっくりくるのでこう呼ぶけど)が目の前でふつうに話したり、話を聞く顔を見たりして思った。
三枝さんは、とてもふつうの、礼儀ただしそうな、ごくふつうのおじさまでした。
言ってることも、とくに奇抜なことを言うわけでもなく、創意工夫がだいじです、とか夢をもって…とか、ものすごーくあたりまえのことで、話す内容がすばらしい!!とかってことじゃなかったんだけど、なんか、とにかく重みのあるひとだったのだよな。
芸人っていうのは、人間を磨くこと、みたいなことをおっしゃってた気がするのだけど、なるほどなあと。
このひとは、ほんとうに、人を気づかうとか人にやさしくするとか、そういうあたりまえのことをちゃーんとやってきたひとなんだなあって、思ったわけです。
なんていうかなあ、勲章もらうくらいのひとだから、きっとほんとうにすごいことしてるはずなんだけど、
なんかほんと、ふつうのひとで、ふつうの話で、落語家だからといって妙に面白い話だったわけでもないし、正直内容はとくに覚えてないくらいなんだけど(すんません)、なーんか、残るひとだった。
ふしぎ。
うめざわ
※落語聞きにいきたい。