やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

音楽はスポーツだ

と思う。
 
これさ、ドラムを初めて叩いてからさ、ずっと考えてるんだけど。
あれ叩いてさ、ぜんぜん身体が思うように動かなかったのよ。右手と左手と右足左足がさ、ほんと言うこと聞かなくて。
黙々と練習した3時間は、ただ身体に動きを覚えさせるためでした。
 
なんかさーあ、そういうのを考えてたらさ、小さいころからヴァイオリンを…とかだとお嬢様ねえって評価されるけどさ、ぜったい違うよな。そんな軽やかで華やかなもんじゃない。
 
 
音楽はさ、難しくてつまらなくて美しい音色を奏でるものだって思うとなんか高尚なもんっぽいけど、そうじゃない。
 
私にとっては、音楽って、思いどおりに動かない身体との闘いでしたよ。
 
私は中学高校の5年弱、マンドリンという弦楽器を部活でやっていたのだけれども、思い返すと、動かない左手の指をいかに言うこと聞かせるか、カチカチの右手の力をいかに抜くか、その闘いだったように思います。
 
美しい音色なんて、頭で考えて出せるもんじゃなくて。
自分の右手と左手を必死の思いで飼い慣らして、やっと出るものだった。
 
弦を押さえる左手の指先の皮はさいしょ真っ赤になるし、ずっとやってたらそこだけやたら分厚くなってくるし、
下手なころは弦を弾く右手に力入れすぎて疲れるし。
 
楽器を初めて2ヶ月目、中学1年生の夏休みなんて、7月は毎日9時から16時までひたすら右手を上下に動かすことだけを練習してましたよ。ひたすら、ただひたすら、ラの音を鳴らすだけ。
 
ぜんぜん、お上品で華麗な感じではないよ。
ただただ、泥臭い練習の積み重ね。
 
何年経ったって、思いどおりに速いパッセージが弾けなくて、その8小節をひとりで2時間練習するとかね、思いどおりの音がでなくて、鏡の前でひたすら右手のストロークを練習するだけとかね。
 
音楽って、ほとんどの部分が身体性に依ってる気がするんだけどな。
そうは思われずに、精神性みたいなもんばっかり取り沙汰される気がして、むむ、って思う。
 
音楽系の部活とかってさ、非体育会系の代名詞みたいな感じだけど、違う気がする。
使ってる体の部位が少ないだけで、自分の身体を思いどおりに動かす訓練だもの。
 
 
美術とか音楽とかダンスとか演劇とか、そういういわゆる芸術とされるものは、みーんな泥くさーいもんのはずなんだけどなあ。
 
うめざわ
※また楽器弾きたいなあ。できれば誰かといっしょに。