やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

本1冊分を一言で紹介するなんて無理だって

本は大好きなんだけど、本を紹介するのはぜんぜん好きじゃないのだ。

紹介するっていうか、
この本はこういうことが書いてあって、こういう意味があるからぜったいいい本なのよ、って説明するのがいやなの。

たんに「これぜったいいいから読んで!!」って押し付けることは、したくてうずうずしてるんだけど。

だって、賢い人が本一冊分紡ぎ出したすばらしい言葉をさ、素人が一言で紹介できるわけないやんって思うわけ。

一言で説明できるくらいなら、本になってないわって思うわけ。

好きなもんについて、どこがすばらしいかって誰かを説得するために言葉を繰り出すのは、おうおうにしてむなしいのだけど、本に関しては、むなしいとかじゃなくて、無理だわ。

本を読んで思ったことならまだ書ける。
けど、本の内容を紹介しつつ、その本の素晴らしさを語るってことは、私にはまだまだできんなあって思う。

おもしろかった本は、とにかく読め、って渡すしかできない。

本が好きなだけ、おすすめしたい本があればあるだけ、自分の無力さがかなしいなあ。

むっちゃおもしろい本はたっくさんあって。
きのう言った『評価と贈与の経済学』もだし、さいきん読んだのだと『昭和の洋食 平成のカフェ飯』っていう日本における食生活の変化みたいなものを研究したのもおもしろかったし、『ジャニ研!』っていうジャニーズに対する論考みたいなもんもよかったし、どう考えてもAV監督二村ヒトシの本は人間の芯までささるもんだしさ、エッセイとかだって歌人・穂村弘のもんとかは爆笑できるもんだし、枕元にはいつも糸井重里がいるし、
ああ、止まらないからここらへんでやめるけど、とにかくだ。
とにかくだ。

本は自分で読むしかないや。
しかも、量を読まんと、おもしろいもんにはあたらんわ。

ということを、すきな500冊の本を目の前に思う。
この本棚を眺めるのが私はほんとに好きなんだけど、ときに切ないのです。
彼らも、私に読まれるだけじゃなくて、もっと響く読み手がきっといるはずで、そういう人に私は適切なものを勧めたいんだけど、どれだけ私が言葉を尽くしても一冊の魅力にはかなわんからなって。読んで、としかいえないこの歯がゆさ。

力不足ですね。
ほんと歯がゆい。もう。ああもう。

うめざわ
※いいものが目の前にあるのに、そのよさをきちんと伝えられないで見過ごされることほどつらいことはない。
※石橋プチ情報:石橋に関しても同じことです。石橋にはいい居酒屋さんが300軒近くあるのに、ひとりの人が行くお店はほんの数軒に限られてる。そりゃもったいないぜってことで、「月刊イシバシスト」なるフリーペーパーは発行されています。今年度からリニューアルしましたが、後輩たちが次号を鋭意作成中ですので乞うご期待。