やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

完璧なケーキはどこにもないので

とっても残念な話なのだけど、

そのときすごく欲しくて、でも手からすり抜けていったものは、

一生手にはいらないのだ。

だって、同じものは二度と目のまえに現れないから。
 
ものすごーく楽しみにとっておいたケーキが、誰かに食べられてしまった。
そのときのケーキは、同じものを買ってこようが、絶対に戻ってこない。
どれだけわめいても、戻ってこない。
 
そのとき食べられなかったケーキは、手に入らなかったからね、美化されるのです。さぞかしおいしかったのだろうと。
逃がした魚は、つねに大きい。
 
その理想化されたケーキにはさあ、ぜったいに生身のケーキは太刀打ちできないのだよ。
だってそれは、理想の、空想上の、完璧なケーキだから
 
そうやって、手に入らなかった完璧なケーキたちを夢見てるとさ、
たとえ大好きな人がイチゴのショートケーキを切って、お皿に乗っけてくれても、
こんなんじゃない違う、ってだだこねるのだよ。
 
でもねえ、そうやって現実を否定しまくってると、
飢えちゃうのよね。
理想のケーキは、お腹には入らないから。
 
目のまえにある、傾きかけたショートケーキを食べるしかないのですよ。
だって、それだって、じゅうぶんおいしいんだしさ。
おいしくても、理想のケーキが脳裏によぎると、こんなんじゃ満足できない!って思っちゃうんだけど。
 
でもでも、とにかく現実的に、お腹を満たすほうがなにより先なのだと思う。
欲しいもんじゃなくても、飢えたら死ぬから、とりあえずカチカチのパンだって口に入れないとだめなんだよ生きるためには。
 
たぶん、極端にいうとどっちかなんだろうなと思う。
 
仕方なくまずいパンを食べて、生きるか、
理想のケーキを思い浮かべたまま飢えて死ぬか。
(でもたいがい、まずいと思ったパンもそれなりにおいしくて、理想のケーキはそんなに言うほどおいしいわけでもない)
 
私はねえ、消えてしまったホールケーキがとにかく欲しくてねえ、
でも、そんなんどこにも売ってなくて、
ただ、すっごい探したら、似たようなものが8分割されて売られてて、
それ8個並べたらホールケーキになるじゃないよかったねって言われても、
寄せ集めても欲しかったものにはならないもん!あれじゃないとやだもん!って泣き叫んで、
とりあえずこれ食べなよって差し出されるパンでさえ、こんなんじゃやだ!って投げつけてる状態ですね。
(おお、客観的に見てみると、まじで最悪だな)
 
理想ってのは、存在しないから理想なんだってことを、わからないといけないなと思ってはいる。
 
うめざわ
※たまに、いやわりと、公開する意味あるのかなーって思う記事あるのだけども、まあいいや公開しとく。誰かに読まれることを想定しないと、きちんともやもやをまとめようとできないし。