やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

職人の店・商売人の店

たぶんね、お店には2種類あるの。
商売人の店と職人の店。
 
要は、儲けるためにこの店やろっていうところと、
俺がこれ好きだからこれ売ったんねんっていう2種類があるなあと思ったの。
 
私が、商店街とか個人商店が好きだっていうのは、
そこに職人の店が多いからなのね。
 
べつにチェーン店がすべて嫌いとか、個人商店ならなんでも好きとかではなくて。
 
私にはすごく素朴な願いがあるのよ。
それは、お店やさんはそれが好きでやってたら商売になっちゃったっていうものであって欲しいってこと。
 
ケーキならケーキが好きで、おいしいケーキ食べてもらいたい!っていう思いから、お店やさんをやってて欲しいのだ。
 
この地域、この立地なら、客層はこんなところで流行りはこう、
だから、マフィンのお店を作ります、とかであって欲しくないの。
 
ほんとに素朴なのはわかってるけど、理想として。
よしもとばななさんの『ごはんのことばかり100話とちょっと』に土地を投資の対象として考えてチェーンを増やしてる話をひいて、こう書いてあったのよ。
 
「食に関するお仕事は『自分の食べてるうまいものを食べてほしい、しかもそれが商売になったら幸せ』からみんなスタートするのだと思っていたので悲しかった」
 
そうなんだよなー…。
 
そもそもの成り立ちから考えるとさ、
往々にして、職人の店のほうが楽しそうにいいものを出してると思うのね。
商売人の店のほうは、もっとドライに儲かるものを出してるって気がするのだ。
 
良し悪しじゃなくて、使い方次第だと思うわけ。
 
おいしいもの食べたいって思うなら、そりゃ1皿300円均一!とかのチェーンの居酒屋じゃなくて、おっちゃんが長年やってるちっさい居酒屋のほうがいいでしょ。
 
安く大量にものを手に入れたい場合は、商店街を端から端まで歩くんじゃなくて、業務用スーパーに行ったほうがいいでしょ。
 
私なんかが何を言ったら怒られるのかもしれないけど、
石橋の居酒屋を30軒以上まわって、
マスターと話をして、ごはん食べさせてもらって思ったのは、
やっぱりね、個人経営のお店でも、商売人の店と職人の店にわかれるなあって。
美味しいものを求めるならば、ぜったいに職人のお店がいいと思う。
(見分けるには、自分で行くか誰かに感想聞くかしかないけど)
 
(ああ、いろんな人が見てるから断り書きを入れとくと、職人の店が商売っ気がないとかでもないし、商売人の店のものの品質がよくないとかそういうことを言ってるのじゃないからね)
 
ま、たんに、かつて見ていたテレビは「プロフェッショナル仕事の流儀」(と「爆問学問」)だけという私が、いまも職人が好きですってだけの話に収束するのかもしれないけど。
根っこを見てみると面白いかもよ。
 
うめざわ
※関係ないけど、よしもとばななさんのエッセイの「…は、すごい」って言い方がとても好き。こう、ハイテンションで聞いて聞いて聞いて!って感じではなくて、とても静かに素直に驚いてる感じが可愛いなあって読むたびに思う。フラットなんだよな、偏見とか蔑視とかのまったくないフラットな驚き。まんまるに目を見開いて息をつめて静止したあと、おもわずふにゃって笑っちゃう「すごい」はとても可愛い。