やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

殺してあげる、君のために。

 
男の子なるやさしさは紛れなくかしてごらんぼくが殺してあげる (平井弘 )                          
 
六本木ヒルズ森美術館でやってるLOVE展に行ってから、ちょっとこれが頭から離れない。会期は明日9月1日までだからあれだけども、思ったことでも書いとくか。消化不良で胃もたれしそうだから、それを解消するために思ったことを吐き出すだけ。どんな展覧会だったのかはHPでも見てね。(参考:LOVE展:アートにみる愛のかたち―シャガールから草間彌生、初音ミクまで | 森美術館
 
や、すごくおもしろかったんだけど。
グロテスクな展覧会だった。
見ちゃいけないもの、目を背けたくなるものも多くて、しばらく気持ち悪いというか、なんかホラー映画を見たあとあみたいなぞわぞわ胸やけするような余韻がずいぶん残った。
 
恋はグロテスクだ、ってことをすごく思った。
ふだん見ないようにしてるものが、いかに多いかね、
それを目の前に出されると、ほんと、おえってなってしまう。
それは、必ずしも性的なことだけではなくて、もっと精神的な、エゴみたいなものも含めてね。
そこらへん考えて、さっき挙げた短歌を思い出したのだ。
 
「殺してあげる」んだよ。君のために。それは愛なんだけども。そうなんだけども…!!っていう割り切れなさ。
 
 
ああ、メインビジュアルに使われてるあの大きいハート型のオブジェがすごく象徴的だったなあ。
ハート型だもん、自立するはずのない不安定なかたちが、なぜか立ってて、黄金の包装紙に包まれた中身は、キラキラしててつるんとしたハート型だからチョコレートとかね、なんか良さそうなもんに思えちゃうんだけど、でもまったく見えなくて、見ようとしても外側から見ると、ゆがんだ自分しかうつらないのね。しかもキラキラ金色の鏡にうつる自分よ。
 
ああ、これぞ恋のイメージだなあって。言ったって伝わるもんじゃないんだけども、実際にその作品の目の前に行って、こりゃおもしろいなーって。
 
あとは、あれか、曽根崎心中の映像を見せられた、次のブースでぱっと目に入るのが、ボーカロイドのキャラクターと思しきイラストってとこもとてもよかったなあ。
ああ、昔っからやってること変わってないじゃん!!って。
人形動かしてそれにキャーキャー言うのはずっとやってることなのね、とか。最後は初音ミクのライブ映像で終わるのも、なんかとても、インタレスティングではあったね。三面に映像が流れてて、目の前にいろんな人が描いた初音ミクのイラストがタブレットでずらーーーーっと並べられてて。
 
なんかこう、ほんと、人は幻想にふりまわされるよねえって。
でもそれは必ずしも不幸ではなくて、自己陶酔できて超幸せにもなるよねえって。傍から見ると、ほんと気持ち悪いんだけど。
この展覧会見たら、恋愛は幻想でしかなくて、ただグロテスクなものだって、そればっかり思うようになってしまったよ…
 
もう、イメージさえあれば、人間って簡単に動いちゃうよねというか。イメージしか見てないなって。実体じゃないとだめなものって実はすごく少ないんじゃなかろうかって、もうかなりの部分がバーチャルになっても人間は適応できちゃうんだろうなって。
 
ああすげえもやもやする。結局これだけ書き散らしても発散できなかった。どうしよう。
 
うめざわ
※こんなこと書いてたら、この前商店街の手伝いしてたときに久しぶりに会った強烈なおっちゃんAが出会い頭に「あんたいつまで大学おんねん!?」「男はおらのんか男は!」「はよ見つけなあかんでほんまに!」と畳み掛けるだけ畳み掛けて、颯爽と去っていかれたのを思い出しました。ええ。ええ…ど、どうしたらよいのでしょう(さらに途方にくれる)