やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

モノの向こうに人がいる

 

「モノの向こうに人がいる」

この事実を私はぞくぞくするほど面白いと思っているし、

だからこそいろんな人にも実感してもらいたいと思っている。

 

どんなものでもね、ものの向こうには人がいるんだよ。

その人の存在や思いを知ると、やっぱり嬉しいのだ。

なんでかって、その瞬間に、そのモノはただのモノではなくて、

ストーリーのなかに登場するモノになるから。

 

今日は、

石橋の某パン屋さんの工場で手伝いをさせてもらったというか、

遊びに行ったというか邪魔しに行ったのだけどもさ、

パンが粉の状態から、店に並ぶまでってこんな工程を経て作られてんのかって、

何度目の当たりにしてもびっくりすんのさ、まじで。

 

最近いちばんびっくりしたのでいうとさあ、

食パンって5枚切りとか6枚切りとかになってるじゃない。

あれってさあ、素人じゃできないなあってことかしら。

 

こう、食パンをもって、それを円盤の電ノコみたいなので切るんだけどさあ、

まーあ切れないこと切れないこと。

柔らかいパンをノコギリみたいなんで切るんだからねえ、

そらたいへんだ。まっすぐ切れない、厚さバラバラ。

(切ったのは自分の分だけですのでご安心を)

 

でもまあそれをパン屋さんたちは、

1時間に45本の食パンを8枚切りにするとか。(たしか)

(ここで食パンマメ知識:食パンは1本で3斤とれる)

 

まっすぐで厚さのそろった食パンが買えるのは、

その向こうに、切ってくれる人がいるからでさあ。

 

もっとあたりまえのことをいうと、

今日は1000個近く(たしか)のパンを袋詰にもしたんだけど、

たとえばロールパンが1袋5個入りとかだったらさ、

袋に5個ずつ入れてる人がいるわけさ。

 

単純作業だけど、日常生活でやる範囲と桁がちがうから、結構大変なのだあれ。

1袋10個ずつ入れたらぴったりになるはずなのに、

1個残っちゃって、あれあれ、って何袋も量りにかけて、

9個しか入ってない袋探すとかさあ、そういう作業があって、

10個入りのミニロールパンとか売られてるわけよ!

 

で、そのロールパンの表面がつやつやしてたらさ、

焼く前のパンに1個1個、タマゴを刷毛で塗った人がいるわけよ!

たまに手にべちゃってつけたり、

左手に持ったボウル落としそうになったりしながらさ!

 

こういうことは、見るまで想像もしなかったなって。

 

お店で売られてるものは、最初からその形で存在してたわけじゃない。

材料、パーツの状態からさ、人の手と時間がかかって、商品の形になってるわけで。

 

このことをいかに普段意識してないか、よくわかる。

モノのストーリーを知ると、ほんと面白いんだ。

 

私は口を開けば石橋石橋言ってるけど、それはさあ、

こういう個人商店の多い街にいるとだな、

モノの向こうに人がいるって知れるだけじゃなくて、

モノの向こうの人と直に会えちゃうからなのよね。

 

ふだん意識しないで食べてるパンもお菓子もコロッケも、

ちゃーんと作ってる人がいて、

届くまでにいろんな人のいろんな作業がなされているんだよねえ。

 

うめざわ

※人間分子の関係、網目の法則。