やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

ひとりじめ、したいことある?

ねーねーおかーさん聞いてーって、

たぶん誰でも、いくつになってもその思いはあると思ってるけれど、

これだけは私だけのもの、誰にも言わないってことがあると、

とたんに愉快になる。

 

自分にとってとくに大事なものだから、

聞いて聞いてって、自慢したいのはもちろんそうなんだけど、

そこをぐっとおさえて、ひとりじめにする。

そっちのほうが、よっぽど愉快。

そういうものってあるよなあ。

 

ちょっと大人になった気がするよ!!

 

あのね、言っちゃだめだからね、あのね、ボクね、アメリカのスパイでね…とかさあ、すごくいいじゃない!

言わなくても自分で思ってるだけでにやにやできること、あると、とてもいいね。

 

みんなが遠足でお菓子食べてるときに、自分は何も食べないで涼しい顔してる。

お菓子?ああいらないよって顔しとくの。

でも、内心、家に帰って、おじいちゃんがこっそり買ってくれたシュークリーム食べるのが楽しみで楽しみにでしょうがないとか、そういう感じ。

 

ちょっとした背徳感と、まわりへの優越感と、

そういう楽しみ方ができる自分大人!っていう三つの要素でね、

なんでもないことが、むふふって笑えちゃうものになるから、いいね、ひとりじめ。

 

こう、理想としては、薄明かりのバーカウンターでひとり、煙をくゆらせつつ、三角のカクテルグラスを白魚のような指を並べてつまんで、ふと笑みをもらして、マスターに「何かいいことありました?」って言われて、ふふって笑って目を遠くにやる美しい大人の女性ですよね。何かこう、自分のためだけの宝物をこっそり持って自分だけ味わう感じ、ひけらかさずあくまで自分自分を楽しませる感じ、それはねえ、大人な感じですよねかっこいい。

 

とか書いてたら、やかん焦がした。

もういい。

もらった落雁でお茶飲むよ。ふんっ。

 

うめざわ

※ちょっと『檸檬』っぽい喜びですな。