やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

全体重で命綱にすがれますか

こんな想像をする。

みんな命綱1本でガケにしがみついている。
なんとか上まで登ろうとしている。

そこには、たぶん大きく二種類の人がいるんだ。

ひとつには、命綱を頼りきって登る人。
腰にひもをしっかり巻きつけて、上から垂れてくる綱を力いっぱいしがみついて登っている。

もうひとつは、綱に体を預けられない人。
綱がほんとうに自分を支えきれるのかわからなくて、自力でしがみついてる人。

どっちが楽か。
肉体的にはそりゃ前者だ。
上に繋がれてる命綱を頼っていったほうが、きっと消耗する力は少なくて済む。

でもね、ほんとに楽?って考えたらわかんないな。
だってさ、すげーこわいよ?
下からはさ、誰がもってるのかの何かに結わえつけてあるのかもわからないのだ。その綱が。
そんな不確かなものにさ、全体重、つまり命をかけるのは、やっぱりこれ以上ないこわさだと思うのね。

たぶん、信頼する、ってこういうことなんだと思うんだ。

たとえば命綱を友だちが握ってるとしようや。

「絶対離さんから」
そりゃ言うだろうさ。
でもさあ、あなたが全体重かけた瞬間、彼や彼女が支えきれる保証はどこにある?
そのまま3時間耐えられる保証はどこにある?

でもさ、そうやって命綱にすがらないと、今度は自分の体力を消耗して、谷底に落ちてしまうかもしれない。

かといって、全力でしがみついたら、その力で支えてくれる友人まで一緒に落ちてしまうかもしれない。

さて、あなたならどうする?

うめざわ
※おんなじガケでもさ、すげーこわい思いする人と、するする登っちゃう人がいるんだ。