やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

つまみ食いならなんでもうまい

 なんでも、つまみ食いするだけならおいしいんだよね。

誰かがもう飽きたって言ってるものだってさ、

一口ちょうだい?ってもらうぶんには、とてもおいしいのだ。

なんでこれを嫌だって言ってるんだろう!って思うね。

でもさ、たとえばそのおかかのおにぎりを、

毎日毎日、死ぬまで食べるって考えたら、ああ確かにいやになることもあるかもなあって。

でもでも、毎日食べてるからこそわかる違いみたいなもの、今日のごはんよく炊けてるこのおかかおいしいとかさ、そういうものはたぶんつまみ食いじゃあわからないんだろうなあと。

 

もろもろはそういうことだ、と私は理解している。

なんでもいい。仕事とか、学生なら授業とか、住む場所とか、恋人だとか、家族だとか、ペットだとか、そういうもの。

 

たとえばペットとかはさー、友だちの家で、2,3時間ねこじゃらしで遊んだげるとかだったら、そりゃ楽しいぜ。でも、私もほしい!とかって言われたら、ちょっと待て、と言う。毎日毎日ずーっと顔合わせてたら、眠いときに走り回ってたりしたらイライラするし、トイレの世話もしないといけないし、ひっかいたり倒したりして壊すものだってあるし、騒いでて目が覚めることもあるんだからさ、いくら可愛くても、いくら溺愛してても、投げ飛ばしたくなることもあるわ!っていうな。それでもほしい?って。もちろんずっと一緒にいるからこその幸せみたいなもんもたっくさんあるけど。たぶんそんなもんなんだと思う。

 

私は、周りの人たちの生活がうらやましくなったりしたときには、よく考えるな。

「でもそれ私毎日できるか?」って。

たいがい、できません、って思う。

そうすると、自分と違うふうに生きてる人を素直に尊敬できる気がする。

 

うめざわ

※こういうのんもあるけれど。

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである (文春文庫)

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