花屋の白杖
耳の聞こえない先生から、手話を習っていたことがある。
授業の最中、趣味は?と問われて、生徒が順繰りにつたない手話で答えていった。
「読書です」「スポーツです」「絵を描くことです」
私はとっさに「音楽を聞くこと」と答えてしまって、自分でひどくうろたえた。
まずい。まずいぞ。
でも先生は、にかっと笑って手で言ったわけだ。
「私たちも和太鼓のコンサートが好きです」
もうひとつ。
白杖をついている方がいて、知人が声を掛けたのだと。
「どちらまでですか?」
そしたらこう返ってきたと。
「むこうの花屋です」
うめざわ
※触れる絵っていうのがあるみたいなのよね。モナ・リザとかの名画を凹凸で表わしたもの。アナウンス日誌|NHK さいたま放送局