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やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

夏の終わりをこれ以上完璧に表現できることがあるだろうか(いやない)


扉に閂(かんぬき)を落とすように、夏はぱたりと終わる。

あ、吹く風に秋が混じった。となればその瞬間、たとえば足先のペディキュアの色がにわかに浮き上がって映る。けれど、この数ヶ月ずっと馴染んだ習慣にすぐさま閂を落とすわけにもゆかず、しばらく足先がもじもじ所在ない。秋の入り口、紬のきものに袖を通そうかという自分になって、再び指の先は素に戻り、白い足袋のなかにおさまる。季節は巡ったのである。

平松洋子『買えない味』「指 かぶりつく直前の味」(ちくま文庫

 

 

もうなにも、言うことはありません。

うめざわ

 

買えない味 (ちくま文庫)

買えない味 (ちくま文庫)