やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

「ボクの夢買って」が卑怯すぎて

えーと、めっちゃ怒っている。さいきん遭遇したのよ、「ぼくの夢のためにこれ買ってください!」って頭さげてくる人。


平日の夕方、観光地歩いてたら寄ってきて、首からさげたクーラーボックスを開けて「なんちゃらカーでなんちゃらしたいんで、おにぎり買ってください! 今日これだけ売らないといけないんです! ぼくの夢叶えてください!」ってまくしたてられたのだ。即座に断った。だって、いくらかなのかも言わなかったのよ。

けどね、断ったあと、すごい罪悪感があったの。「私が数百円出すことで彼の夢が叶うのであれば、それくらいしてもいいんじゃないか?」って、ぐーるぐーる後悔した。「私心が狭いなあ」「すこしくらい手助けしてもよかったじゃないか」って。

で、そしたら帰り道にまたばったり会って、結局買ってしまった。「うっわーマジすか! やさしー! ありがとうございます!!」そして、買ったら買ったで「フェイスブックやってます? 夢が叶う瞬間とか、SNSでアップするんで! 友だちになりましょう!」って。facebookを断れば、twitterinstagramを繰り出してくる。強いなあ。断るけどよ。
で、そこらへんに座って食べたんだけど、これがまたおいしくないの。どうしてまずくなるんだ、おにぎりが、っていう感じ。そして2個で500円。高い。

 

この一連の流れで、いろいろ考えた。すっごいモヤモヤしたんだ。わかったのは、「やり方が卑怯」ってことだ。

だって「夢を叶えてください!」はおかしい。「おにぎり買ってください」ならいい。商売だものね。「今日これだけ売らないといけないんです!」は、ちょっと「知るか」って感じじゃない。さらに「ぼくの夢を叶えてください!」と重ねてきた。さらに「知るか」ですよ。この人は、自分の都合しか言わなかったのね。

もしこれが「今日売らなきゃいけないの、残ってるんです。だから割引するんで」なら、「おう、安いなら頂戴」ってなるかもしれない。「このおにぎり、なかにぼくのおばあちゃんが作った梅干しが入ってて、めっちゃおいしいんです。ぜひ食べてほしいんです」とかなら、「へー!気になる!」ってなるかもしれない。

 

ものを売るときには、「買ってくれたらあなたにこんないいことがありますよ」って伝えるのが商売だと私は思うのだけど、この人はそれがなかったんだ。

ちがう、ないだけならまだマシだけど、べつのものを差し出したんだ。
そう、「このおにぎりには、『ぼくの夢を叶えられる』という付加価値があります」って言ってるんだ。

ここだ、私が腹が立って仕方なかったのは。あまりに傲慢じゃないか。それは商売じゃなくて、募金活動だ。

夢=無条件いいもの=叶えてもらうに値する!って思ってるから、そういう恥ずかしいこと言えるんだろうけど、「ボク豪邸建てたいから、お金頂戴!」って表明してるのと同じじゃない。
でもこっちも、「夢は無垢で大事にすべきもの」って価値観をもってはいるから、それを断ると「悪いことしたな」って思ってしまう。

 

善意を食い物にしないでくれ。

おにぎりを売りたいなら、君の夢はおいておいて、おにぎりの宣伝をしよう。
お金集めたいなら、君の夢を宣伝して、募金活動をしよう。

 

うめざわ

※書いてて心臓がバクバクした。はーー。