死ぬための生命力
また、線路飛び込みの話を書かせてください。
あのね、彼女の背中を見た瞬間、
意に反して線路に落ちたわけではないと
わかって血の気が引いた。
なんでかっていうと、背骨。
前のめり、斜め45度だったの。
着地する気のない飛び込みだった。
しかもそれを、電車が来たのを察知して、
早すぎず遅すぎず完璧なタイミングで。
完璧な瞬発力と、瞬間的な勇気によって
生まれた躍動感が、あの背中にはあった。
それが次の瞬間、消えているなんて、
やっぱりおかしいと思ったんです。
死ぬために、
爆発的な生命力を使うって変でしょう。
ろうそくの火が消えるような
静かな死が自然とするなら、
あれは、花火だったよ。
爆発してから、空へ消えた。
やっぱり不自然。生物的に変な死に方だった。
あの勇気を、
どこかべつのところで発揮できたらって、
心底思ってしまった。
うめざわ
※彼女がいま幸せでありますように、と
どうしようもないことを考えます