やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

青と黄色、どっちがえらい?

その人が好きなもので、その人を評価するのは、もうやめたいな思う。
 
 
たとえば。
アニメとかアイドルが好きだけど、周りにはぜったい言わない人がいる。
ラノベが好きです、BLが好きです、ジャニーズが好きです、
そういう人は、結構息をひそめている。
 
こんなもの好きって言ったら、おかしいって思われるんじゃないかって。
馬鹿にされるんじゃないかって思うからだよね。
 
もっとあるなあ、占い、スピリチュアル、自己啓発とかもそうだ。
 
確かにいるよ、
「え、そんなもん好きなの…(気持ち悪い)」って言って、あからさまにひいていく人。
 
けども、たいがいの人は、「ああそうなんだ、へー」でおわるんだよね。
 
暴露するまでは、自分の趣味おかしいんじゃないのってヒヤヒヤするんだけど、言ってみればなんてこたあない。
 
 
「人に言えない趣味」でググると、質問サイトのおもしろいページが出てきた。
 
私は主婦ですが特撮が好きです。人に言えない趣味をお持ちの方はいらっしゃいますか?という問いに対して、
人には言えませんが、アニメ、ロックバンド、オカルト、プロレスが好きですっていう人がざくざく回答欄に出てきてて。
 
本人は、ぜったい言えないんだよそれ。馬鹿にされると思うから。
でもねえ、はたから見れば、べつに中年女性がプロレス好きでもべつにいいじゃないって思うんだけど。
 
本来、その人の嗜好とその人の価値は、接続され得ないものよ。関係ない。
 
頭のなかでは何考えたっていいと思うのね。
誰かを殺したいと思ったっていいし、大量殺戮を夢みたっていいと思うのね。
それを実行したら犯罪になるだろうし、口に出すのも時と場合を考えないと危ないけど、思ってるだけならいいじゃない。
 
べつにさー、人を撃ち殺していくようなゲームが好きだからといってさー、その人が残酷で人として劣ってるなんてことはないし、児童ポルノのようなものが好きだって、べつにそれ自体は咎められるべきことではないと思うのだけれども。
 
もっかい言うよ、その人が好きなもので、その人を評価できるなんてと思わないほうがいい。
ただの好き嫌いなんだから。
 
肉が好きな人と野菜が好きな人、どっちがえらいのよ?
赤が好きな人と青が好きな人、どっちが高尚なの?
 
たとえば、焼肉が好きな人を見てさ、動物愛護の気持ちがなくて残酷なやつだ!って思いますかいな。ちょっと考えすぎでしょう。
青が精神性の高い色で、赤は暴力的な色だから云々、とかは、馬鹿げてるなあと思うでしょう。
 
それと同様に、エログロなアニメをよく見る人と、美術館めぐりが趣味っていう人を比べて、前者を蔑むのはおかしな話だし、幼稚で卑猥な(とされている)イラストが好きだからと言って、周りに対して引け目を感じる必要はない。
少なくとも私はそう思うんだけどなあ。
 
逆にね、ちょっとマイナーなミュージシャンが好きだからといって、「こいつの良さがわかるのは俺だけだ…俺は他のやつらとはちょっと違う…」とかって優越感をもつのは、まあべつに勝手にだけど、私は変だなーと思うよ。
 
 
ただの好き嫌いに、過剰な意味付けをしすぎなんだ。
 
 
もっと言うと、性的嗜好に関してもそうだ。自分のそれが多くの人とずれていると思っている人だって、うしろめたく思う必要はないとも思う。
 
女の子が女の子好きでもいいしさー、男同士でもいいと思うしさー、両方好きでもいいしさー、そういうものに興味がなくてもいいしさー、ありすぎてもいいしさー、常に何人かと付き合っててもいいだろうしさー、そうしたいと思うんだったらそれでいいじゃないって思うなあ。だって、そうなんだからしょうがないじゃん。
 
他の人と違うからといって、劣っているわけではないし、ましてや憐れまれたり同情されたりするべきではない。
自分がマイノリティだと思うのはひどく心細いけど、数が少ないからといって馬鹿にされていいわけはないし、胸を張っていいものだとも思う。
 
自分がマジョリティだと思っているなら、それがたまたま多数派なだけだ、って思っといたほうがいい。
たとえば、性的嗜好に関していえば、あなたは努力して異性愛者になったわけではないでしょう?生まれたときからたまたまそうで、それがたまたま多数派だっただけだから。
 
 
繰り返すけど、その人が何を好きであろうと、それはただの好き嫌いだから。
 
これは、べつに、あなたが怖いものが嫌いで、目の前にホラー映画が好きな人がいて、ってそういうときに、ホラー映画を一緒に見なきゃいけない、ってそういうことを言ってるんじゃなくて。
 
ホラーが好きな人なんて、想像力が欠如してて人格的に…って思うんじゃなくて、
極めて単純に、「あなたはホラーすきなのね。わかった。でも、私は苦手だから一緒には見られないよ」っていうスタンスをとればいいんじゃない?って話。
 
同様に、社会的に馬鹿にされうる趣味をもってたとしても、あなたは馬鹿にされる存在ではないよ、ということ。
私だって、本棚に、2012年地球は5次元になる!とか、金星人が書いたという本とか怪しげな本結構持ってましたよ!(けっこうおもしろいんだああいうの)ちょっと前まではぜったい見られたくない類のものだったけど、いまは、だからなんじゃい、って思う。
オカルト本は読みますが、それが何か?っていう感じよねえ。
 
好きなもんは好き、でいい。
 
たとえば、それで馬鹿にされたら、そんな人とは付き合わないほうがいい、自分の価値観押し付ける人だから面倒よ、と思います。
 
で、これは、幸か不幸かわからないけど、
あなたが自分の嗜好に関して、命がけの暴露をしても、おそらくあなたが想像するより多くの人が「ああそうなんだ」って受け止めると思います。
素晴らしいねって賞賛されることも、よくないよって馬鹿にされることもなく、ああそうなんだってちょっとした驚きとともに受け止められるだけだと思います。
 
それがいいか悪いかはわからないけど、そんなもんなんだって、自分が必死で隠したりしてるものって。
 
うめざわ
※カミングアウトって、やってしまえばなーんてことはないもんなんだけど、するまえはどーしても無理だと思うんだよなあ