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やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

ずっと持ってるといいことも

ものを持たないっていうのは、平成28年の日本における美徳のひとつで、厳選した好きなものを必要最低限にしか持たないのがよいとされている。
多くのものを持たないために、シェアとかレンタルのサービスがたくさんある。そういうサービスを使えば、必要なものを必要なときに安く使うことができて賢い消費者だと。

私も本屋にいけば、やたら白っぽくてつるりとした表紙のシンプル生活本の前で長い時間過ごす。もの減らしたいなあと思いながら、もの減らすための本を買う。ごちゃごちゃと本が積み重なるテーブルを右手に、なんにもない部屋の写真を見てうっとりする。

ものがなくても困ることはありません、そう彼らは言う。それはたしかにそうなんだ。私も何度か断捨離祭りをして納得できた。ものは必要なときにだけ手元にあればいい。基本的にはそうだ。

なんだけど、なんだけど、本は違うなあってそういう話を友人とした。そのとき読むのと、今読むの、同じ本でも感じ方がぜんぜん違うからね、本は所有しておいたほうがいいんじゃないかって。いま、自分の本棚にある本を読み返してて、まさにそれを感じている。

私は本に買った日付を書いているのだけど、それ見たら2006年って油性ペンで書いてあって。ああ10年前。私高校生だわ。鉛筆で線もひいてあったんだけど、それがさあ、2016年の今まさに抱えている問題について書いてあるところだったりしてさあ。たぶん高校生のときには体感はなかったはずなんだけど、それでも引っかかったんだなあって。そして10年後、実感を伴って痛いくらい感じているよ、とそんなことになるなんて。本を持ち続けていないとわからないことだった。

 

うめざわ

※ちなみにこの本。

 

体は全部知っている (文春文庫)

体は全部知っている (文春文庫)