やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

東郷美人のいまむかし

東郷青児の展覧会にすべりこむ。いやーーーーーーーーー、よかった。東郷美人が、そりゃもう完璧な美しさでため息しか出ないのはもちろんのこと、作風がどんどん変わっていくのを見せてもらえてうれしかった。基本的に女性を描いてる点で一貫しつつ、18歳のキュビズム風のエネルギッシュな作品から始まり、だんだんモダンに洗練されて、だんだん叙情的になって、最後にこれまでのデザイン性とモダンさと叙情感がぎゅっと凝縮して、CGですかこれは、っていうくらいパーフェクトな天女が誕生した。最後のほうはやっぱり素人目にみても天才的ですよ。もうね、筆のあとが全然なくって、イラレで塗りましたか?ってくらい均一でなめらか。プラスチックでできた人形を写真で撮りましたって言われても納得するくらいのなめらかさ。ここまで人の手が見えないと、すごく近未来的に見える。そうか、10代のと50代のと、ずいぶん作風が違うけれど、どこか浮遊してる感じ、「夢と現の」あいだにいる感じは変わらずあるのですね。

 

うめざわ
生誕120年東郷青児展 The 120th Anniversary of the Birth of Seiji Togo A Retrospective of Togo's Depiction of Women

※途中、女体をまるっこく柔らかさを強調するように描かれてた時代が長いけど、最後はかなり理想化、というか、ボン・キュッ・ボンのいわゆるナイスバディ(古いね)に着地してたのもおもしろい。理想化の方向転換。

 ※巡回展だったのだけど、大阪・あべのハルカス美術館でのフライヤーとてもよかったな……あのピンクと紫を合わせると、東郷青児の灰色さえも色っぽく見える。会場でも一部背景が同じピンク色で、入った瞬間華やかさに圧倒された。かなり大胆な味付けだけど好き。https://www.aham.jp/exhibition/future/togoseiji120th/images/pdf_ad_togoseiji120th.pdf

東郷青児の言葉として「私の内に潜在していたルーブルが徐々に発酵し始めたためであろう」(私の履歴書より)が紹介されてたんだが、なんだこのかっこよさは。私のうちなるルーブルの発酵…

※いろいろ書くけど、あのCGっぽいツヤツヤ感はレンピッカを思い出した。比べるとよくわかるな、こっちは強い大人の美女。東郷青児のはたおやかな美少女。美しき挑発『レンピッカ展 - 本能に生きた伝説の画家 -』|展覧会紹介