やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

亀の腕力

菖蒲の生い茂る水辺には、亀もいる。頭と甲羅のてっぺんだけ水から出して、すすーっと泳いでいらっしゃった。意外と優雅なスイミング。
突然止まる。向きを90度変える。首を伸ばし、空をじっと見る。なるほど、地面にあがりたいのね。水面から15cmほどの高さに地面がある。そこか、いやでも亀さんの身長ほどの高さですよ、そこ。ちと困難なのでは。

彼はゆっくりとヘリに手をかける。ちょっと肘をまげて、甲羅をあげようとする。ふんばる。ふんばる。あ、落ちた。また手をかける。後ろ足をばたばたする。甲羅の前のほうに重心を移そうとする。ふんばる。落ちる。手をかける。落ちる。これをえんえん20分繰り返してらした。結局また泳いでどこかへお帰りになりました。

そりゃそうよね、自分の身長ほどの高さだもの、あの短い腕ではあがれまい。せめてもうすこし上腕筋を鍛えてからでないと。あの甲羅背負ってらっしゃるのだから、腕立て伏せ、効くと思うな。……ハッ、もしかしてあの亀さん懸垂のトレーニング中だった…の…か!?

 

うめざわ

※初夏の陽気がもどってきましたね。湿度が低くて、椎茸がよく乾きます。