黙って差し出す
いつも思うのだけど、だめなものに対しては何がどうだめなのか、いっぱい言えるんだ。ここが汚いとかあそこの掃除ができてない、わかりにくい事実関係が違う句読点の打ち方が気に食わない紙質が悪いいろいろ。
だって、つまらないっていうのは、自分がわかる範囲内にあるからなんだ。「この人つまらないんだよね」っていう人は、私が私が想像できることしかしないからつまらないわけでしょう。なんでも同じで、私は対象のものをすべて見渡せたと思ったとき、つまらないって思うんだ。
でもさあ、いいものに対しては、その逆だからなにも言えなくなっちゃうんだよな。自分が想像の及ぶものより、はるかに広く深いからすばらしいと思うのだ。筆舌に尽くしがたいとしか言いようがないのだ。夕焼けのまえでは、黙って佇むことしかできないのです。
なので、この本とんでもなくすごいんだけど、と思える本に出会ったとき、困るんです。いつも。とりあえずとんでもなくすごいから読め、としか言えません。
今回は、これ。とにかく文才、すごい。以上。
傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった (幻冬舎文庫)
- 作者: 小野美由紀
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/02/10
- メディア: 文庫
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うめざわ
※これに関しては、ほんと何も言えない。ひとつ言うことができるとするなら、タイトルはずいぶんキャッチーで軽い感じがするけど、中身はものすんごく濃密で鮮烈で真剣。自分の人生にひとつでも疑問符がついてる人は迷わず手にとるべし。