やどかり

昼のお星は目に見えぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。(金子みすゞ)

今日も猫

 

 仕事をしていて寝るのが遅くなり、家族が寝静まった真っ暗な寝室のベッドにすべりこむ。猫がやってきて、私の腕に乗り、ごろごろいいながら私の手にその小さな手を重ねてくる。
 そしてそのままのかっこうでひとつの枕でいっしょに寝てしまう。それはいつものことだった。
 その夜、いつも夜中に目を覚まさない私がなぜかふっと目を覚ました。目の前がまぶしかったからだ。猫のごろごろ音はまだ続いていた。そして猫は光っていた。
 (中略)
 あんなふうにきっと猫はたまに深夜に光って自らとまわりを癒やしているのだろうと思う。
 猫と手をつないで同じ枕で寝ることができるなんて、お話の中だけだと子どもの頃思っていた。でも毎日そんなふうに奇跡が起きている。猫が光ることを知らないであるいは知っていてみんな小さな奇跡をたくさんもって生きている。

 

吉本ばなな「夜中の猫」より
キノブックス『猫なんて! 作家と猫をめぐる47話』

 

うめざわ

※いま生きているということの奇跡を、ねこに託してこんなに綺麗に神秘的に描いてくれるなんて。見開き2ページだけの超短編、このなかに『キッチン』がぜんぶ詰まってる。これが読めてほんとうにうれしい。 私だって今日もねこと手をつないで同じ枕で静かに眠る。これ以上の平和と幸せはない。おやすみなさい。